書物蔵

古本オモシロガリズム

福島原発所長の抗命

福島第一原発で、現場の所長が本社の言うことを聞かなかったことが問題になっていた。
似たような問題は時空を超えてどこでもあるもんだなぁと思ったことである。
抗命、とでもいふのかしら(ってそういうタイトルの本がある)。

「抗命」現象に2種あり、と思ふ:帝国陸軍の事例から

抗命が悪事なのか「よいこと」なのか、それは場合によると思う。
これは懸案事項が技術、というか「物理的な操作可能性」に類することなのか、政策、経営というか「コンセプトレベルの問題」にすぎないことなのかによってその是非は違ってくる、というのがわちきの意見。
たとえば、帝国政府が実は戦争をしたくなくて、ヤメロと指示がきたのに、現場の師団が支那軍へ銃弾を浴びせるをやめなかった事例(支那事変)は、コンセプトの問題。これは現場=関東軍が第一義的に悪い。
逆にたとえば、ある作戦をやるのにトラックが150台必要だ現場から言ってきてんのに、中間管理層がテキトーに値切って、18台しか渡さず(画像*1)、やっぱり作戦はうまくいかなくて現場の司令官が命令無視して退却をはじめちゃった事例は、物理的な問題といえよう。だからインパール作戦で「抗命」をした佐藤幸徳(第三十一師団長)は、軍律上、死罪にあたるだろうけど、「よいこと」をしたと思う))。

今回のは、どっちかっつーと後者かしら。前者は政治的な謀反だから普遍的現象で、特殊日本的とはいえないけど(それを罰せなかった軍中央や帝国政府は特殊日本的だった)、後者は特殊日本的(というか昭和日本的)とわちきは思う。

ある事例

こんな例もある。

旧システムに耐用年数が来て…

大きすぎる図書館が次期システム開発をしようとしていたんだそうな。旧システムは耐用年数が来ていた。実は旧システムも、不必要な機能をワンサとつめこみ、その不必要機能を使うために現場で実務コストが跳ね上がったというおバカシステムなんだが、これは開発の目的が不況対策の予算消化にあったため。でもおカネをじゃぶじゃふ使ってとりあえず動いてた。ところがそれの耐用年数がきちった。
んで新システムということになったんだけれど、経営環境が激変し、予算がちょびっとしかつかんということになった。で、安いパッケージソフトを導入することになったンだが、基本をマチガエタ。
肥大化した旧システムの機能をそのまま再現しようとした。できるわけない。
たとえれば支那事変が拡大中に対米戦もおっぱじめ、経済がもたんから次の戦略というとるのに、支那戦線も対米戦もそのままやるというようなもの。せめて支那戦線を放棄するぐらいでなけりゃあ(゜〜゜ )
まあ、top managemetがまづコンセプトレベルで仕切りができんかったというワケ。
で、今回の東電原発のようにトップがぐだぐだで現場はどうなるか、という問題になる。って書物蔵がこんな話振ってんだからどーせ失敗として話を振ってんだろーってか(^-^;) あんたはスルドイのー(σ^〜^) でも、ちょっと違う。いやサ、失敗の仕方が問題なんよ(。・_・。)ノ

テクノクラートのクビをとばすと…

抗命現象が発生した。Top managementがテキトーにお気楽な方針やスケジュールを振ってくるのに対し、現場の指揮官が適宜、言うことを聞かなかったのだそうな。問題は、システムがどっちかっつーと物理的可・不可能性ワールドに属することがらだったとゆーこと。
で、原発の場合には技術的に高度すぎる(と大本営も認めてた)から所長の首を切れんかったわけだけど(技術的に特権を保証された官僚、テクノクラートってワケだ)、この図書館の場合、システムをただのコンセプトの問題と思ったか、top managementがただのバカだったかで(おそらく後者)あっさりとテクノクラートの首を切ってさしかえちった。
ところがやっぱりまた、抗命する現場の士官がでてきた。Top managementはさっそくクビを飛ばす。
これらの人物は旧システムの破たんをかろうじて救った者たちであったのだが…。
で。
ヤヴァイのだと(・∀・)

それはともかく

菅首相

「結果としても、注入を続けたことは、間違いでなかった」として、吉田氏の処分は必要ないとの認識を示した。
菅首相、吉田所長の処分必要ないとの認識」
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20110528-OYT1T00603.htm

というから、そうなるだろうと思われるが、ここでチト面白いのは

「親分肌」「頑固」 福島原発の吉田所長
http://www.nikkei.com/news/headline/related-article/g=96958A9C93819499E0E5E2E2E58DE0E5E2E7E0E2E3E3E2E2E2E2E2E2;bm=96958A96889DE0EBE0EBE4E1E4E2E0E5E2E7E0E2E3E39C9CEAE2E2E2

という記事。まじめなテクノクラートって、似たような性格になるのかね。

*1:出典は『失敗の本質』 自動車中隊をトラック1台にいいかえた。