書物蔵

古本オモシロガリズム

ムー大陸本の原書を昭和27年に丸善へ注文した人、だーれ?

かの間宮不二雄昭和13年にちびっとだけトンデモ皇道主義と接点をもったことをあきらかにしたのはオタどんであった。
いままた、市河彦太郎という、ちょっと不思議な大使さまのエピソードを掘り出してきておる。彦タローもまた、スメラ学塾と戦時読書運動を通じて大東亜ト学に連なるお方ぢゃ。
さて……。
それらはみな、戦前の話。
戦後世界でトンデモアイテムにアクセスを図った図書館学の超重鎮がおったことが判明した。

古通

昭和28年12月号の『日本古書通信』に蒐書家アンケートの結果が載っている。分載されたらしく、この号では「アンケート(7)」となっておるのぢゃが、なんとなく書誌学、図書館学などの人が多い感じ。

阪本, 一郎 (1904-)‖サカモト,イチロウ(読書心理学)
今沢, 慈海 (1882-1968)‖イマザワ,ジカイ(図書館学)
会田, 軍太夫 (1900-)‖アイダ,グンダユウ(科学史?)
小見山, 寿海‖コミヤマ,ジュカイ(書誌学)
仙田, 正雄 (1901-)‖センダ,マサオ(図書館学)
西村, 捨也 (1903-)‖ニシムラ,ステヤ(図書館学)
川崎, 操‖カワサキ,ミサオ(図書館学)
草薙金太郎(古川柳)

それぞれ、1)集書の遍歴、2)探求中の図書に答えている。通覧したらオモシロかろうが。
ところでひとり、オモシロいものを探求書にしている人がいる。

二、Churchward; The Children of Mu The〔ママ〕 (ムー国)
  〃  ;The Lost Confineut〔ママ〕 of Mu
〇昨年丸善へ注文しましたが、遂に入手できませんでした。
 本書の梗概訳書
〇ゼ・チャーチワード著 仲木貞一訳「南洋諸島の古代文化」岡倉書房 昭18

いったい誰だと思う? 昭和27年にわざわざ丸善ムー大陸本を丸善に注文したのは(σ^〜^)
今沢慈海ぢゃ(・∀・`;)

今沢, 慈海 (1882-1968)‖イマザワ,ジカイはエラすぎて

今沢ジカイといへば、図書館を育てた人々. 日本編 1 / 石井敦. -- 日本図書館協会, 1983.6に、小河内, 芳子 (1908-)‖コゴウチ,ヨシコが短文を書いているが、ほとんど何も書いてないに等しい。
まあそこから略歴をメモるとこんなようになる。

1882.3 愛媛県
1907.7 東京帝大哲学科卒
1908.7 同大学院修了
1908.1 任東京市事務員
1913.3 日比谷図書館勤務
1914.12 日比谷図書館館長
1915.4 同館館頭
1921-1940 文部省図書館講習所講師
1931.3 依願免東京市主事
? 成田中学校校長、成田図書館館長
1968 死去

訳書もさがしとるらしいが、これはさすがにどっかで読んだのであろう。
小河内さんのこの短文のおかげでか(ほかに研究めいたものがない)、ヒトのいい児童サービス好きのモーロクじーさんのようにイメージされとるけど、このヒト、全然違うのよ。
ものすごいヤリ手。
年表の1915.4に「館頭」になったとあるでしょ。これって、市内の全図書館全体を指揮するというものすごい役職なのよ。それを日本ではじめてやっちゃったヒト。エラすぎ。エラすぎて東京市の教育官僚が反乱を起こして追い出すほどエラかった。1937年の満洲図書館大会で小河内さんが秋岡梧郎と旅行して、不倫旅行だから辞職せいと迫られたことがあったでしょ。あれって実は教育官僚による今沢追い落としの余波だったみたいだよ。
と、図書館史トリビアはともかく。
いったい今沢は何を考えて「ムー国」に関する原書を読みたかったのだろう?
永遠の謎かしら(*゜-゜)