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古本オモシロガリズム

民間MARC批判なの?

JLAの政治声明(2010/2/9)「「「我国を代表する書誌データの一元化」」について」(以下、「について」)について、いったい何のことやらわからん、とゆー声が日本のbibliobloggerにある。

正文→http://wwwsoc.nii.ac.jp/jla/kenkai/20100209.html

ワケワカランという声
maru3さま http://twitter.com/maruyama3/status/8910625332
yoshim32さま http://d.hatena.ne.jp/yoshim32/20100212/1265956495
hatekupoさま http://d.hatena.ne.jp/hatekupo/20100211/1265916163
みなみなさま http://b.hatena.ne.jp/entry/www.jla.or.jp/kenkai/20100209.html

わちきもワケワカラン(゜〜゜ )
近年のJLA執行部は、全国的討議もせずあっさり指定管理反対に転じたり、ずいぶんと身軽というかそそっかしいというか。戦後の図書館記念日反天皇制的な性格づけを(やっぱり近年になって討議もせずに)新たに加えたのも(http://d.hatena.ne.jp/shomotsubugyo/20090430/p1)その一環なのだろうが…。
こんなに軽々しく政治的決定をやられちゃうと、不信任をつきつけざるをえなくなっちゃうんですけど(゜〜゜ )
今回の政治声明「について」についても、なーんも一般会員には知らせずやっとるようだし、解説もない。ならば…
わちきがコメントをつけてみん。
さっと見たところ、他に材料がなくともテキストの分析だけでかなりいろいろなことがいえるようにみえるの。

活字議連ノ計画書ヲ明ラカニスヘシ

 活字文化議員連盟は1月27日に開催した総会において、「官民の協力のもと、文字・活字文化の記録を保存し、国民がいつの時代にも活用できるよう我国を代表する書誌データの一元化に努める。」との活動計画を確認しました。 日本図書館協会は、この提起に賛同するものです。

まずこれ。「活字文化議員連盟」(以下、活字議連)が先月末にまとめた活動計画(以下、計画書)なるものの文言の引用があるが、この計画なるものの本文がネットにどこにもころがっとらん。かろうじて総会があった旨の報道はあったが(http://www.nikkei.co.jp/news/seiji/20100127ATFS2701M27012010.html)、計画書が見あたらぬ。一等第一に、活字議連の計画書なるものが明らかにならねば、わからんもんに賛同されても、一般会員にはワケワカランというのが正しい見方であろう。

図基法つぶした勢力が言うは片腹いたし

 書誌データとは、今日ではいわゆるMARCを指し、当協会はMARCが誕生した初期の頃から、その標準化を図り、すべての図書館で利用できることや出版流通にも活用できること、などを主張し、MARCに関わる検討の際には協会代表が参画し協力してきました。書籍データセンターの発足、運営にも関わり、またJAPAN/MARCの普及に努めてきました。

この第2パラグラフは、未公開?の計画書の文言の解釈(書誌データ=MARCだとする)を行なったうえで、JLAが1980年前後から、MARCの全国政策について関与してきたと過去の経緯を持出し、2010年代の現在ただいま、JLAが関与することに正統的権利があると主張している。
でもなぁ。これらには相当の疑義がある。
まず、他の団体がまとめた内部資料の文言を、サラリと解釈しちまっている。この場合、2つのケースが考えられる。ひとつはJLA執行部が神から人類すべての発言を正しく解釈できる能力を授かっている(全知全能である)と、自認しとる場合。ま、これはないわな。もう一つは、他の団体の内部と内通しとる場合。で、わちきはこっちのほうが可能性としては大きいと思う。つまり、活字議連の内部とJLAは事前に連絡をとっており、外部者が見ることのできない計画書を見た上で、その玉虫色の正文の含意まで、その内通先からおしへられとるということ。
1980年前後に、JLAがMARCやらISBNやらについて全国政策的なことに関与してたのは事実だけど、それって高橋徳太郎とかがJLA会長時代じゃないのかなぁ。けどこの全国政策って、基本的に「図書館事業基本法案」につらなるもので、現在の執行部の流れとは逆さ。つまり、いま執行部に座っとる方々は、当時図問研とか草の根で法案に反対してツブしちゃった(あるいは後に自らが潰したと豪語してきた)勢力ではなかったかしら。当時のタカトクが関与したからといって現在も口出しできるというのは、どーにも、同義的にはハテナである(制度的にはギリギリ正しいが)。悪逆無道なる国家独占資本に協力するなどとは。転向したのかしら。

あぁそうか、民間MARC批判なのね

 質の高い書誌情報にアクセスし、自由に活用できることは出版文化の振興に欠かせません。書誌情報は、版元、取次、書店、図書館など、書籍に関連する様々な場面で利用されています。書誌情報により、読者、国民が求める書籍を確実に提供することを可能にしています。書誌情報は、書籍等の知的資源にとって基本的なインフラであり、したがって公共的かつ標準的であり、無償もしくは低廉な価格で供給されるべきものです。

書誌データの重要性について高らかに謳ってをるけれど… これも道義的には現執行部にはあんま言ってほしくないなぁ。
単行本・開架・貸出し中心主義で*1、書誌データに関するセンスやニーズを館界からなぎはらってきたのは他ならぬ公共図書館系、図問研日図研の主流派ではなかったか(σ・∀・)σ その結果が、公共系の熱心な運動家で書誌データのことを論じられるヒトってひとりもいないということでは(前はちょっとズレてたけど、いた)。「貸出は私たちの誇りです」というヒトはいても、「整理は私たちの誇りです」というヒトがいなくなっちゃった。
ん、さういへば、TRCのデータ部なんかは、多分にビジネスであろうけれど、「整理は私たちの誇りです」といいそうな気がしてきた。

したがって公共的かつ標準的であり、無償もしくは低廉な価格で供給されるべきものです。

ああそうか。「整理」に矜持を持っていそうなのは今ではTRCデータ部ぐらいと書いて、ん、とたった今、気づいたよ。この文が実は今回の声明の主文なのではありますまいか。
つまり、この文章は逆さにとらえるべきで。

MARCを有償もしくは相当の価格で供給しているところは、公共的でも標準的でもない

と宣言しておるということでは。つまりいわゆる「民間MARC」排撃ののろしというわけだねこの声明は。それがTRC(だけ)なのか、ほかの大阪屋とかのマークも含むのかはわからんけれど。
もし、民間MARCで、多機能で網羅性もそこそこありそれなりにお高いMARCがあれば、それを攻撃しているとみるべきですなぁ。

デタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!出羽の守

 標準MARCは世界各国をみても、国の納本図書館がその作成の責務を担っております。日本でも国立国会図書館は、納本制度に基づき我が国で出版される書籍等を網羅的に収集し、もっとも包括的標準的な書誌データとして、全国書誌の役割を果たすJAPAN/MARCを作成しています。書誌データの一元化は JAPAN/MARCによることが合理的です。

「世界各国では」「外国では」の出羽の守の部分はまったく無意味な記述であるから無視せざるをえないなぁ。だって、こと出版がらみでは日本固有の制度(再販制:統制品)とか、寡占問屋(取次)とかが現に今、あるからねぇ。こと日本の出版がらみで出羽の守をやっても無効では。

標準化には2つの異なる意味あり。どっち(σ・∀・)

 このJAPAN/MARCがよりいっそう標準MARCとして機能するためには、その利便性を高めることが求められます。図書館はもちろん、版元、取次、書店等を含め、読者にとって望ましい書誌情報が迅速、効率的に提供されることが必要です。

JapanMARCを標準に、というのには2つの意味があって、J-MARCが採用しているフォーマット、目録法、分類・件名に準拠して、各館、各会社でデータを作れ、という意味と、J-MARCに現に存在する個々の書誌データをそのまま使えという意味と。
これはどっちの意味だろう。
って考えればすぐ判るよね。だって、もう民間マークは共通ガイドラインに準拠するという前者の意味ではとっくのとーに(ってか最初から)準拠しとる(除.件名標目)。
ここであえてこんなことを言う意味があるとすれば、それは後者の意味。つまり、個々の書誌データについても、民間MARCは使わずに、J-MARCを使えという意味。
しかし、そんなことほんとにできるのかしら。。。( ・ o ・ ;)

んー、平成の御代に昭和の理想を持出されても…

公共の現場は、もう、1990年代にはすっかりTRCマークに骨がらみになってをるし、Jマークとやらも、参照しやすく均質な書誌データというより、物品会計、貸付契約処理装置用のデータ(やシステム)でしかないようになってきた気がする… ふつー、書誌記述って、研究上利用者に参照されるレベルごとに(つまり専門的にいう「書誌単位」で)採録されるんだけど、なんとなく物理単位になっているような気が… 叢書名典拠もないし… 書架番号が(冊子単位で)単純受入順という噴飯ものだし… ムックにNDCつけなくなっちゃったし… 注記も無定見に簡略化ないし廃止されちゃったし… 著者標目付記事項の生年もつけなくなっちゃったし… 素人まるだしのマチガイ分類が増えてきてるし… あっ、よく考えたらここ数年いいことなしぢゃん(σ・∀・)
まぁそーいった整理技術的なこともあるんだけど、致命的なのは業界の勢力分布の問題と、タイムラグの問題ね。

 国民読書年にあたって、JAPAN/MARCによる書誌データの一元化を文字・活字文化の振興に資する課題として関係機関、団体が一致して推進されることを望むものです。

わちきの図書館史の知識では、J-MARCが後者の意味で標準になる可能性があったのは1980年代あたりまでと思う。まだ民間マークが育ちきる前の段階ならどーにかなったのかもしれんけど… 1990年代、民間マークはすくすくと育ち…
対外的にも、たとえばOCLCの参照ファイルにTRCマークってなってなかったっけ(http://b.hatena.ne.jp/entry/current.ndl.go.jp/node/7908)。世界のOPAC(worldcat)的には日本「国のMARC」はTRCマークということになってしまったのでは(^-^;)
すでに民間マークがそだってしまっている平成の日本では、民業圧迫といわれかねませんぞよ。それにタイムラグの問題は流通に入りこんどる流通系=民間マークにいつまでたっても勝てやせんしのー
ん?(・ω・。) まてよ。
さうか、まさかさうくるとは… 二大取次のTRC戦争に国会をまきこむということか…?

では国会附属図書館がそんなに全国書誌に血道をあげとるのかとゆーと…

と、役所が組織として、実際になにを優先して動いてをるかは、大臣個人の美辞麗句ではなく、実際の事業や予算、あるいは組織の建制順などによって知るべき。それによれば、確かに書誌部という書誌データ専業の局が2002年にできたことは(http://www.ndl.go.jp/jp/library/data/020531_1.html)、昭和30年代の整理部以来のことで、理想の全国書誌への胎動として歴史的には評価できるけど、2008年にあっさり廃止されてをるね。これは組織として優先順位をさげたとしか解釈できないねぇ(・∀・`;) そうであれば書誌データの質の低下も納得がいく…
役所のほうが組織として優先順位を下げとる事業に肩入れとは、JLAも政治主義的にうごくわりには政治にうといと思うなぁ(*´д`)ノ もちろん、議員先生をうごかして全国書誌局とか新設する、って展望があんなら、ナルホドすごいけど。
でも、こんな声明文を発するヒマがあったら、現行の「図書館記念日」を反天皇制の象徴として解釈する文を、はやくひっこめたほうがいいのでは。

*1:たしかにこれだと詳細な書誌データなんて不要。登録番号単位で物品の貸付管理さへできればよい