Katz3さんが、reference book(レファ本)の訳語「参考図書」について疑問を呈しているのが目に留まり、「そういえば、こんなんあったなぁ」と、たまたま手許にある『「参考図書」の用語の変遷』国大図協(1970)なるパンフのコピーを。
なんでも先行研究ってのがあるんだねぇ(・o・;)
いろんな図書館本から、reference bookの訳語にあたるものを抜書き。
主要文献を総ざらえしてるんだけど、要するに、
明治末から「参考図書」と「参考書」の2つの訳語が成立して、それが昭和30年前後まで続くんだけど、それ以降は「参考図書」だけになっていく
と読み取れる。
「参考須要の書籍類」 東京書籍館規則(1875) 「参考図書類」 太田為三郎(1908) 「参考書類」 堀謙徳(1909) あとは昭和30年前後まで、「参考図書」と「参考書」の2本立て。 昭和40年代からは「参考図書」に一本化される傾向。
いやぁ、しかしなんでも先行研究ってのはあるんだね。
辞書では
ouvrages de re´fe´rence 参考書 白水社模範仏和(1950) Nachschlagebuch 参考書,便覧 岩波独和(1953) Nachschlagewerk 便覧、辞書、百科全書 木村相良独和(1963) book of reference, reference book 参考書 岩波英和(1969) reference book 参考図書 岩波英和大(1970)
だったという。
考察
上記の本によれば、訳語としては、早期に定着し、安定的に使われてきたようにみえる。「参考書」という有力語が昭和30年前後まで並立してたようだがその後、脱落。参考書っていうと、「学習参考書」と受け取られてしまうになったからだろう。
でも、reference bookの前半のreferenceってば、katz3氏とおなじく「参考じゃなくて参照であろう」とはわちきも常々思っていたところ。ほんとは、参考図書じゃなくて「参照図書」「参照書」ってのが正しい漢語訳ではあろう。
実際、昭和20年代さる官庁図書館のレファレンス係が、「参照係」という名称だったという事実も最近発見してるのだo(゚ー゚*o)(ノ*゚ー゚)ノ。
文明周辺国
これは仮説だけど、
Reference bookの訳語が、「参考+図書or書」という形で図書館用語としては例外的に極めて早期に定着しちゃったせいで、そのアトに紹介されたreference work/serviceの訳語に影響して、サービス名が「参考事務」になっちゃった。
そしてこのことが、日本人がreference serviceを理解するのに妨げとなった
のではなかろうかと。
これは、文明の周辺国(日本)の宿命なんだろうけが。
英米の世界では。
まづ先に、referenceって概念があって、そのあとに、reference bookやrefernce workってもんが成立する。
日本では。
辞書や事典を英語じゃreference bookって総称してるみたいですが、訳語をつくりませう。そうですね、参考書がいいでせう(明治期)
え、reference workってな業務があるんすか?*1 うーん訳語を作らねば…。reference bookを参考書って訳しちゃってるしな。じゃ、ちょっとヘンだけど参考事務でどうでしょ(大正期)
ってなカンジ。そしてその戦前期の頂点に「図書館参考事務」という和製library shoolの講座名がある(昭17)。
戦後も
で、reference workは戦後の日本人にだってワカランままで。「リファレンスはへべれけ」だったわけで。
で、このボタンのかけちがいが今にいたるも影響していて、それは別にとりあげるつもりだけど、もういいじゃん、レファレンスを日本語的に縮約して「レファ本」と呼んだのが社会評論家の日垣隆氏。