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古本オモシロガリズム

国会図書館長降格!こりゃ図書館政治史上の大事件だよ

この記事,一般の方にはつまりません。時代のメモとして書くだけだから。
船橋西図書館事件のとき,つくづく業界自由派の思想的怠慢にたいして腹がたったのに,なんにも書かなかったことを反省して,ここに書くなり〜。司書は中毒するから読まないが吉。

春秋会事件以来の図書館大事件だよ

この前サンケイの報道であったけど,国会図書館長の大臣待遇が格下げになることが与野党の政治的合意となっているようだ。
春秋会事件以降の,衆参事務局長天下り素人図書館長ならば,大臣待遇は高すぎるという意見に,わたしは大賛成なわけし,業界の連中は,業界全体にたいしていいことをせず,ひとりで威張ってる国会図書館の館長が減給される,ぐらいの認識なんだろうけど(まー,事実ではあるが)。
でも,個人の意見はべつとして,業界全体の日本国内の政治的地位という観点からいうと,これはゆゆしき問題ですぞ。それこそ春秋会事件以来の。なぜか。

役人のエラサとは何か

わたしもくだらないと思うし,業界の主流の自由派・左派の人たちはハナもひっかけないと思うが,役人には偉さ(本質的な偉さではないので,ここではエラサとしておく)というものがある。
エラサは何で示されるか? ○×大臣とか△□局長とか,という職名か? そんなことじゃ,エラサの本質はわからない。
たとえば,自治体の図書館長のエラサはどれくらいか。まー,よくて課長館長かな。つまり本庁(知事部局)の課長待遇の課長ってところ。昔ならその地方を代表する文人であったはずの人間が。わるくすると係長館長。係長って,中央省庁じゃ30才のハナタレキャリア小僧がやってる…。ほんとは立派な文人が,役人の世界じゃハナタレ小僧と同格ってところが,よくもわるくも笑える(笑うしかない)。
おなじ「課長」って職名でも,本庁なのか出先なのか,国なのか地方なのかでまたエラサが違う。地方へいけばいくほど,おなじ課長でも格下になる。職名じゃエラサはわからないのよん。
その,××待遇というのは,端的にいって,給料のこと。×級○号俸(国会職員だと×級○号給ね)。これが,役人の本当のエラサを示している。だから,もしあなたが出会った役人の本当のエラサをしりたければ,何級か聞かないとだめ。肩書きだけ麗々しくても,木っ端役人かもしれないぞ〜 ちなみに数字は大きい方がいい。1級より2級のほうがエライ。それから号でなく級のほうがエラサを表している。
だから,たとえば○×研究所長が来ました,だれが出迎えますか,ということになると,その所長さんの俸給をしらべて,それに対応する役職のものが出迎えるということに(あー,ばかばかし)。
ただ,どんなにばかばかしくて,どんなに本質的に無意味でも,そのようにしかお役所はまわっていないし,これからもそうだし,さらに(ここが最重要だが),図書館は消費しかしないセクターだから,本質的に政府(地方政府)におすがりしなけりゃ存続できないということがある。

今回の事件の図書館史的意味

で,先走っていきなり結論なんだけど,日本国内でイチバン俸給の高い図書館員たる国会図書館長が1階級降格するということは,じつは日本国内の図書館員全員が1階級降格するということなわけだ。
もちろん,現在ただ今,制度的にはそうではない。だからみな,のんきでいられる。けれど,つぎのことを指摘しておこう。まず第一に,国会図書館員があのように処遇がいい(=給料がたかい)のは,全国の図書館員の代表として高給となるように制度的に設計されていたという事実があるということ。第二に,制度はともかく,事実上の政治的発言力が低下することがある。
第一の点については,いま手元に史料がないので省略。ただ,この前廃止された職階法の世界では,そう構想されていたと言っておく(この職階法と司書職の関係についても,まともな研究がない)。
第二の点については,いまならば,国会図書館長がほかの省庁に,なにか相談だかお願いだかをしにいったときに(文句でもいい),むこうは今まで大臣待遇の奴がでてきたけど,これからは,金輪際その子分しかでてこないということだ。
低い職位のほうが限られた権限しかもたないのは,これは古今東西あたりまえのことだ(階級を廃止していた時代の赤軍は別(笑))。
まあ,国会附属図書館長が,日本という大陸法を継受した国で,トンチンカンなまでに地位が高かったといわれればそれまでだけど(あれば米国議会図書館の猿まね)。まあ,憲法と占領時の立法で部分的に英米法を継受したと解釈すればいいのかもしれんが。

図書館側のオカシサ

まずは業界。おそらく何がなんだか,その意味がわからんのだろう。もちろん役人のエラサなどより,文献提供や資料保存の使命や職務のほうがずーっと重要ではあるが,図書館員の大多数はいちおー役人なわけだから,役人としてのエラサにも目配りしていーんじゃないだろか。本質的な偉さ(司書としてのスキル)と,かりそめの世俗的なエラサ(俸給)とを混同していばらなけりゃいいんだから。
あと,図書議員連盟が音無しってのは解(げ)しがたい。議連ってのは,国会議員のサークル活動なわけなんだけど,時として,業界の利害の代弁者になる機能もある。なんにもしないのは,議連がある意味がないよ。まー,その議連の機能をぶっつぶしたのは業界団体ではあるんだけど(笑)(これについては図書館事業基本法について再論)。

政治・マスコミのおかしさ

まえにも指摘したけど,野党が賛成してどうする。わたしゃどの与党支持でもどの野党支持でもない狂接輿にすぎんが,野党が国会図書館長の降格に賛同するは,論理としておかしい。与党なら電話一本で行政府からいくらでも情報をひっぱれるけど,野党はできない。じゃ,どこからひっぱるの?野党独自の調査部門? アハハ。まー,それなりの調査組織をもってるのは党官僚のいる某政党だけでしょ。
朝日がなぜ報道せぬ。サンケイがマッチポンプでやってるとはいえ,逆さの観点から朝日が言及してしかるべき。でなけりゃ私が朝日を取ってる意味ないじゃん(笑)。船橋西のときには,サンケイにものすごく遅れたけど,一応あったぞ。これじゃあサンケイに替えちゃうぞ。

さいごに

まーいろいろ書いたけど,わたくし的には,もうどうでもいいわけで。ただ,論理としてこうだよ,と。業界誌も新聞紙もぜんぜん騒がないけど,じつは業界史的な意味があることだと指摘しておく。あとで書いても迫力ないからね。
このまえの(って40数年前)春秋会事件のとき,間宮不二雄は,ざまーみろ(要旨)って言ったわけだけど(過去記事参照),あれは,間宮が,根っからの民間人で,米国帰りで,関西人だから言えたこと。今の図書館員は,根っからの税金喰いで,ドメスティックで,「東京出銭ランド」行きたがりなわけなんで,そんなふうに思っちゃいけません。自分が間宮とおなじ地平に立ってると思うなら,それこそ不遜の極みなり。
どーもね,図書館学説史に興味があると,余計なことが気になってね。なかなか仙人になれません。

2014.6.29

文章はそのままセクションごとに別エントリになっていたのを1エントリに再編す。