書物蔵

古本オモシロガリズム

地域資料の復権

次のものを読了す。

  • 『ライブラリー・リソース・ガイド』(LRG)第31号 特集「図書館からLibraryへ」責任編集:福島幸宏

中小レポート(1963)以来、やっちゃダメ、と言われつづけていた地域資料論を、むしろこれからやるべき、という提唱。
LRG誌はこの号からゲスト編集者を立てた形式にするよし。米国の”Library Trends"みたい(・o・;)

日清戦争当時、絵草紙屋は「街頭テレビ」みたい

日清戦争当時、絵草紙屋は「街頭テレビ」みたいな機能をはたしていた。
山下重民「戰時東京市中の實况」『風俗画報』(85)p2~5(1895-02)

 去年以来、何処の絵草紙店に至るも、其店前には観客常に市を成せり。店頭掲くる所を見れは、皆是れ征清の新版画ならさるはなし。観客中自ら説明を為す者あり。「彼にあるは、平壌の役。原田重吉玄武門先登の図なり。「此にあるは、金州城攻撃の際、小野口徳次爆烈薬を以て、門扉を破砕する図なり。「此の如く連戦連勝とふハ、ナムト愉ゝ快ゝの事ではないか。書生後に在り、大声にて「帝国万歳、絵草紙屋万歳。〔」は無し〕
 戦争は、自然に地理を研究せしむ。戦争前は未だ曾て知さりし。〔略〕

絵草紙店が、この頃に街頭テレビ的な報道機能があったわけだけれど、山下はむしろ国民教育の機能を見ている。うしろにいた書生が「絵草紙屋万歳」と叫んだのは、えぞうし屋の立ち見機能をほめたたえてのことか。
山下の筆はこの後も「号外/\。大勝利号外と、声勇ましく連呼し、小鈴をふり鳴らし、新聞売子の匆々に走り行くにそ、人々嬉しさの余り、シメタ/\、又勝たと見江る。早く買へ/\。是れ娘何をクツ/\し居る。新聞屋ー号外やー。」と新聞売子から号外を買うおやじを描写し、さらに「雑誌店に至り、其陳列せる所を見れば、半ば是れ戦争に関せし者なり。」と、当時から昭和前期にかけてあった雑誌専売店の店頭陳列雑誌の半分が「日清戦争実記」(博文館)などの戦争ものであったと指摘する。

【電話帳 ハローページ廃止へ】

NTT西日本およびNTT東日本は、2021年10月以降に発行・配布する50音別電話帳(ハローページ)最終版をもって、終了することを発表。最終版発行後も番号案内(104番)で電話番号を調べることは可能。


>電話帳は住宅地図と並んで、蓄積すると
>よいレファレンスツール・地域資料になる

さうなんだけど、ちゃんと蓄積してきた図書館が全国にどれほどあるか…

国会図書館だって、2005年あたりに不動産業者が「地歴調査」に押し寄せる以前は放置同然だったし
(゜~゜ )

初期の月報で好きだった連載「ラベルと請求記号」

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初期の月報、好きだったなぁ 本や図書館のことがよくわかる
「ラベルと請求記号」という連載が一番好きかな
この連載は歴史ある図書館だとジェネラルコレクションが資料群(NDLでは目録の「島」にあわせてシマと呼ばれたこともあった)からなることを教えてくれる。
びぶろすにも古い号には図書館学の良い記事かチラホラ
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初期の月報に「廿日出」の三文判があるのは、これは春秋会事件後に乗り込んできた千葉県立の廿日出, 逸暁 (1901-1991) ‖ハツカデ,イツアキさんの旧蔵。びぶろすに赤えんぴつでSaitoとあるのは斎藤, 毅(つよし), 1913-1977旧蔵。
shomotsugura.hatenablog.com
廿日出さんは事件で退陣死亡した金森さんの次の館長になろうと乗りこんできたのだった(っ´▽`)っ
しかし「不祥事」といへば、実は15年まへの書物蔵出現自体が不祥事だなぁ組織論的には(゜~゜ ) わちきが古本道を復活させたのは1年間にわたるパワハラが原因だったから あと、わちきが書物蔵その他に書いていることって、みんな本で読んだことばっかで、公知の事実ばっかなんだわさ
廿日出さんの野望についてはちゃんと『調査屋流転』に書いてあるですよ(σ ・∀・)
不祥事というのは、何年かに一度あって、ちゃんとギリギリ、新聞記事にちっちゃーくなったりする さういふ意味で、ちっちゃーな新聞記事の背後になにがありそうか、書いてあることはあくまで一部なんだらうなぁ、といったことを推論する習慣がついたな
歴史とマスコミ論のお勉強である

エアフィックス社のカタログにプラモ受容史の片鱗を見る

ブックカバーチャレンジ最終日 プラモメーカー、エアフィックス社のカタログ
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むか〜し実際に見ていたものは、これより少し前の版だけど、これらはしばらく前、高円寺の週末展で安く拾ったもの 刊行は1970年代の前半かなぁ… カタログ類は刊記がないのが困る この手のものは週末展にほとんど出なくて、むしろヤフオクに出るような気がする
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これ見ると分かるけど、当時のプラモは実際に手に持って飛ばして遊ぶものなのよ
毎夏、親の親友んちが横須賀(正確には田浦)にあって、必ず猿島へ海水浴に行ったんだが。 当時、記念館三笠の舳先んとこまで米軍の敷地で、フェンスのむこうで米軍人の子弟が、B-17のプラモを振り回しているのが見えたなぁ(*゜-゜) あれはエアフィックス製だったに違いない ん、ラベールか?
ついでに一緒に拾ったフランスのメーカー、エレール社のカタログ
後ろは宮崎駿の画集ね
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兵隊のプラモも実際に戦争して遊ぶもの だからお城もあった
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飛行機をブーンと口でいいながら手で飛ばす、というのは、今から考えるとやや滑稽ではあるけれど、当時はむしろ一般的なプラモ受容で。 アニメ『風立ちぬ』のメイキングで宮崎駿庵野を前に、実際にそうやってて「ああ、これは古きモデラーしぐさだ(・o・;)」と感動したものぢゃった
エレール社の箱絵はみなみな、油絵風の美麗なもの。 プラモは箱絵とセットで受容されるものだったのよ。それが1980年代、米国での消費者運動の高まりで、購買者を騙すもの、とされて完成写真にさしかえられてしまって、ずいぶんプラモの受容法が変わったんだった。リオレエオリビエ、欲しかったなぁ(゜~゜ )
エアフィックス社はおもちゃも作ってた
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拙ブログでは、ほとんどプラモに言及しとらんね いまモデラーはジャンルで分化しちゃってるが、わちきは初期モデラーの系譜を引いているんで、わりとなんでも好きだったなぁ
モデラーの性格類型 - 書物蔵shomotsugura.hatenablog.com

罫下や前小口に押す印は、隠し印ではないような


罫下や前小口に押す印は、隠し印ではないような… (・o・;) 隠れてないし(σ^〜^)
仮説ですが。 むかし実際に大学図書館で押していたんですが、特に名前は意識されていなかったように思うのです。 罫下印とか小口印とか、本の部分+印、というのは固有名としてはイマイチ また1980年代に本物の隠し印を押印していた図書館は皆無になっていたはず すると
すると、というよりそして、2000年代の、外注、委託全盛期を迎えると、なんでもかんでも、箸の上げ下ろしからマニュアル化しなければならくなるわけです。 行いとしては、真の隠し印はなくなっていた一方、ことばとしては残っており、 行いとして、罫下印が残っていたので、
たまたま残っていたことば、隠し印と たまたま残っていた行い、罫下への押印が くっついてしまったのではないかと思います。

「2000年代の、外注、委託全盛期」のマニュアル化…なるほど!モノゴトが形骸化していく"仕業"が、よくわかりました。 以前、隠し印を調べていた時期(5年以上前)に、知り合いの司書さんに「隠し印」のことを訊ねると、前職ではまだ押捺していたという証言がありました。東京の某巨大文庫です。

形骸化というか、消滅した後に作られる「新しい伝統」といったところでせうね(σ ・∀・) 貴姉の創造せる蔵書印DBは前近代図書に限らず図書一般の受容史の一部を実証する手がかり集として期待されまする

NDLサーチにインプロセス書誌が出る意義ないし意味はいかに?

https://pbs.twimg.com/media/EbjuGEFUwAANqTM?format=jpg&name=large

神保町のオタ
@jyunku
6月28日
国会図書館サーチで既にヒットするなあ。南陀楼綾繁・書物蔵・鈴木潤林哲夫・正木香子『本のリストの本』(創元社)(・∀・)

南陀楼綾繁
@kawasusu
6月28日
出版情報登録センターからの情報みたいですね。まだ校正やってる段階なのに、載っちゃっていいのかな。誰ぞが不祥事起こして、出なくなるとか…。

まぁ来週から鍵アカに戻すので大丈夫でせう (´・ω・)ノ 昔風にいへばin processの書誌データが、サーチだとずいぶん早くでるんですなぁ(゜~゜ ) むかしなら月報に業務報告が出て、作業の全体像がわかったものですが、長尾館長時代にグラフ雑誌化して現場レベルの報告は載らなくなり、わかんない

書誌情報とは云えない刊行前のデータ(実際変更も多い)を国会図書館サーチで検索できるようにする意味はないように思いますが。収集しても公開しなくてもいいのでは? 他でさんざん出るわけだし。

そこらへんは担当者がどういう発想をしているか、全然わかりませんです。 あと、サーチの発想は何でもぶっこんで何かでればいいでしょ、的な発想で、外来の人達―正確には同志社の原田隆史先生―が創ったものなので、いまの担当がコンセプトをうまく説明できるかどうか…

サーチのそういう位置づけって、利用者には判んないですね。整備されていないデータでも、とにかく引っかかれば調査の手がかりになるという考え方は理解できますが、それと、刊行前の情報を載せるというのは話しが別だと思いますが。

>判んない
Me tooです。ここ十年くらゐ、どういうつもりでやってるのか論理がよくわからんので、むしろ結果から考えるようにしています。
>話しが
本のDBだとそもそも考えてないのかもしれません。 本のDB,つまり刊行された図書のちゃんとしたDBはNDLオンラインへ投げてるつもりなのかなぁ…
話しませんでしたっけ… 長尾さんが初めての学者館長として来た時に、もともと人力でデータをつくる意味がわからんとこぼしていた館長へ、その意義を説明するのに失敗したとかいうウワサがあったこととか。
対比的なのは。 レファレンス業務もシステムをちゃんと作れば不要と思っていたらしいのに、こちらは存在意義の説明に成功したようで(次のエントリ後半を参照)。
shomotsugura.hatenablog.com